まちなかゼミ

【開催報告】7/29(土)まちなかゼミ第4回レポート

◆ 「まちなかゼミ」第4回スタート!

2017年7月29日(土)、第4回目となる「まちなかゼミ」を開催しました。
今回のテーマは「都市景観のイメージ ~近江八幡のまちのイメージを探る~」。
京都大学の川﨑雅史先生を講師にお招きして、ワークショップとレクチャーを実施しました。
参加者は12名。近江八幡在住の高校生や大学生など
地元の方が中心でしたが、県外の方にもご参加いただきました。

 

■近江八幡まちなかゼミ 第4回

【日 時】2017年7月29日(土) 13:30~15:30 (開場13:00)

【会 場】「旧吉田邸」滋賀県近江八幡市多賀町758

【参加費】無料(高校生・大学生、若者大歓迎です!)

【テーマ】「都市景観のイメージ ~近江八幡のまちのイメージを探る~」

【講 師】川﨑 雅史 氏(京都大学 大学院工学研究科 社会基盤工学専攻)

【内 容】(1) ワークショップ (2) レクチャー (3) ディスカッション

 

◆川崎先生について

京都大学 大学院工学研究家 社会基盤工学専攻

川﨑 雅史 (かわぐち・まさし)教授

(以下、京都大学大学院工業研究科社会基盤工学HPより引用)

都市の活動と文化に基盤をおいた景域創造のグランドデザインを探求します、道、広場・公園、水辺ウォーターフロントなど都市の公共空間における景観デザイン、都市インフラ施設のエンジニアリングアーキテクチュア、景観地形解析、都市デザインに関する研究をおこなっています。

 

◆川崎先生と近江八幡のかかわり

京都府出身である川崎先生は、京都大学大学院で「都市景観のイメージ」の研究をされていて、日本以外には、ヨーロッパやアメリカの都市や景観にも目を向けられています。近江八幡には、まちなかゼミの会場である吉田邸改築の際に、有識者として携わってくださいました。

 日牟禮八幡宮や八幡堀をはじめとして、近江八幡の街並みは都市景観の観点でも非常に興味深いものだそうです。今回のゼミでは「近江八幡のまちを読み解く」ことをテーマに、ワークショップやレクチャーを行っていただきました。

 

◆近江八幡の地図を描いてみよう(ワークショップ前編)

まず初めに行ったのは、「イメージ地図」を描くワーク。真っ白なA3の紙に、赤と黒の鉛筆を使って近江八幡の地図を描いていきます。制限時間は5分間なので、あまり悩んでいる時間はありません。

まず前半では赤鉛筆で大まかに描いていきます。

後半では黒鉛筆に持ち替え、細かい部分を描いていきます。

普段生活している人でも、意外と町全体は描けないもの。参加者の皆さんは試行錯誤しながら地図を描かれていました。

 

◆そもそも「景観とイメージ」とは?

地図を描き終えたところで、レクチャーに入ります。川崎先生が研究テーマにされている「景観」には定義があり、「人間を取り巻く環境の眺めであり、イメージ(心象風景)として形成される」ものだそうです。

ここでいう「人間を取り巻く環境」には「建造物」や「自然(環境)」があり、それらをまとめて人間の目線から眺めたものが「景色」であり、それがイメージとして形成されるそうです。

ちなみに、「景色」という言葉は枕草子にも使われていて、日本人には馴染みの深い言葉ですが、西欧人が高山を「景色」として眺めるようになったのは18世紀に入ってからのことなんだとか。

川崎先生はフランスを始めとするヨーロッパでの景観の捉え方を用いて、それらが日本ではどのように捉えらているかを神社や山や川を引き合いに出し解説してくださいました。

海外には「景色があることを知らなかった」という民族もあるそうで、何気なく見ている風景についても、文化ごとで捉え方がまったく違ってくることがよくわかります。

 

◆ケヴィン・リンチの「都市のイメージ」

景観についての基礎知識の次は、いよいよ「都市のイメージ」に移っていきます。川崎先生がご紹介されたのは研究でも使われている『都市のイメージ』(ケヴィン・リンチ著)という本。発刊から50年以上を経ても名著として読み継がれているもので、都市デザインの分野では誰もが必ず一度は触れるものだそうです。

ケヴィン・リンチはマサチューセッツ工科大学(MIT)で都市のイメージ研究調査を世界で初めて行った人物で、都市をデザインすること、都市をイメージとして捉えることを初めて実施しました。

大学で研究をしながらも、実際に社会の中でプロジェクトを形にするなど、理論に実践が伴っている数少ない研究者の一人だと言われています。

当時、都市といえば建築物だけでしか捉えられていませんでしたが、ケヴィン・リンチは周辺の環境も含めた研究を行うなど、先駆的な存在としても語り継がれています。

なお、ケヴィン・リンチが定義する「良い都市のイメージ」には以下の5つがあります。

①与えられた環境の中で意のままに行動できるという実用的な意味において十分で真実である

②頭脳労働の節約のために十分に明晰でまとまりの良いもの(地図が読みやすい)

③安全である

④未完結で、変化に適応できるもの(現実を探検し組み立て続ける)

⑤他の人々に伝えられるものである

 

◆都市の「わかりやすさ」という概念

都市のイメージを語る上で欠かせない概念として、川崎先生は「Legibility(わかりやすさ)」を紹介してくださいました。(先述のケヴィン・リンチの5つの条件のうち①②④にも該当)

ここでいう「わかりやすさ」とは、一言で言えば「迷いにくさ」のようなもの。その街の道路や目印、地域が一目で見分けられるとその都市は「わかりやすい」ということで、その場にいる人に安心感を与えます。(反対に、わかりにくい都市は道に迷ったときのような不安感を与える)

美しい都市とは何か、ということを考える上で、この「わかりやすさ」は大事な概念で、その都市が学問、時間、空間、複雑に富んでいる場合、それは特に重要になるそうです。

ただ、この「わかりやすさ」を突き詰めて完璧な街をつくれば良いかというとそうではなく、人間が工夫する余地があり、発展し続ける「未完結な秩序」のある街が良いとのことでした。

(先生の言葉では「安定基盤となる秩序はあるが、人々のイメージの創造や展開が広がる未完結な秩序」)

その先生の理論でいくと、近江八幡の街並み(旧市街地をはじめとして歴史や学問、複雑さがあり、発展しつづけている)は本当に素晴らしいものだと言えるそうです。

 

◆まちを構成する基本要素

またレクチャーの後半ではケヴィン・リンチの『都市のイメージ』で紹介される、まちそのものを構成する要素として、以下の5つをご紹介いただきました。

①道(パス)
多くの人々にとって、とても強いイメージを持つもの(道に沿って他の要素が配置される)
例:街路、散歩道、運送路、運河、鉄道など

②縁(エッジ)
道と違う線状の要素。異なるもの同士の間にある境界。
例:海岸、鉄道線路の切り通し、開発地の縁、壁など

③地域(ディストリクト)
都市の部分で面として広がるもの。
例:繁華街、文教地区、住宅地区など

④結び目(ノード)
都市内部の主要な点。
例:交差点など

⑤目印(ランドマーク)
目に付きやすく、覚えやすいもの
例:建物、看板、山など

以上5つの要素は、都市をデザインする上で重要なもので、それぞれの相互関係を考える必要があります。

とくに大事なのが「道(パス)」のデザインで、並木や植栽など道が続いていく感覚(連続性)、その道がどこに向かっているのかわかる(方向性)、自分がどこにいるのかわかる(構造)、他の道との交差点のイメージが明確(集合)などの要素が挙げられます。

川崎先生によれば、近江八幡は主要道路から目印となる八幡山が見える(方向性)ほか、異なる集合住宅同士でも植栽が揃っている(連続性)など、道のデザインが優れているとのことでした。

 

◆最初に描いた地図を見直し(ワークショップ後編)

 レクチャーの後は最初に描いた地図を壁一面に掲載し、川崎先生が地図の特徴ごとにグループ分けと解説をしてくださいました。

八幡全体を網羅したもの、安土地域がメインに描かれているもの、八幡山を中心に描かれているもの、道路が細かく描かれているものなど、地図は人によってさまざま。

できあがった地図を通じて、参加者の属性(市内在住でまちに関する仕事をしている、市内在住、昔住んでいた、など)を川崎先生が言い当てられていったのが印象的でした。

ゼミの最後には、参加者で車座になり、今回のゼミの感想を述べていきました。

 

参加者のみなさんからは、

  • 山が自分の生活の一部になっていて、その人の生活の一部が地図に描かれていることが面白いと感じた
  • 地図を描くことで自分の近江八幡への認識を再確認することができた
  • 近江八幡も少しづつ都市化してしまっているが、昔ながらの西の湖と田園地域はこれからも守り続けたい
  • 毎日自転車で通学していて映像として街を捉えていたが、地図のように平面で街を捉えるのは難しかった
  • 地図を描いてみて、自分がいる場所が地図の中心部になることに気づいた
  • 水路や山の輪郭などは自分の興味のあることしか描けず、昔に比べて分かりづらくなってしまっているところがある
  • 仕事で近江八幡に来ることになり、住んでいないからこそまず地図をしっかり頭に入れようという意識があり今回はよく描けた
  • 地形よりも自分の思い出の中にある食べ物屋さんが描きやすく、それから近江八幡の地形を思い出すことができた
  • いざ地図を描いてみることで、自分が住んでいる街でさえまだまだ認識出来ていないところがたくさんあったと感じた
  • 自分の通学路や学生時代に遊んでいた場所やお店を思い出すことで、近江八幡の輪郭を描きやすくなった
  • 旧市街地に目が向いているが、八幡山や水郷や田園にこそもっと目が向いていくといいのかなと思った

など多くの意見が寄せられ、ゼミは盛会のうちに終了しました。

 

◆次回、第6回のご案内

最後に次回のご案内です。

8/26(土) 開催!第6回まちなかゼミ(第5回はクローズ開催)

「可視化の力でコミュニケーションを創造するファシグラの世界」

NTTコミュニケーションズ 古林 拓也 氏

開始時間は今回と同じで、13:30~16:30 (開場13:00)を予定しています。

詳細は公式フェイスブックページイベントページをご参照ください。