◆ 「まちなかゼミ」第6回スタート!
2017年8月26日(土)、第6回目となる「まちなかゼミ」を開催しました。
今回のテーマは「可視化の力でコミュニケーションを創造するファシグラの世界」。
NTTコミュニケーションズ の古林拓也さんを講師にお招きして、レクチャー、チュートリアル、ワークショップを実施しました。
参加者は19名。近江八幡在住の高校生や社会人など地元の方が中心でしたが、県外の方にもご参加いただきました。
■近江八幡まちなかゼミ 第6回
【日 時】平成29年8月26日(土) 13:30~16:30 (開場13:00)
【会 場】「旧吉田邸」滋賀県近江八幡市多賀町758
【参加費】無料(高校生・大学生、若者大歓迎です!)
【テーマ】可視化の力でコミュニケーションを創造するファシグラの世界
【講 師】古林 拓也 氏(NTTコミュニケーションズ)
【内 容】(1) レクチャー (2) チュートリアル (3) ワークショップ
◆古林拓也さんについて
京都府出身の古林拓也さんは現在、NTTコミュニケーションズでITプロジェクトマネージャーとして働かれています。
そのかたわら、社会人プロボノとしてNPO支援にも取り組まれているほか、グロービス経営大学院の修士学科に所属しMBAも勉強されるなど、現職に加え様々な分野でご活躍されています。
過去には近江八幡未来づくりキャンパス 地域資源活用塾のメンターとして参加していただいており、そのご縁から今回のまちなかゼミの開催に繋がりました。
◆自己紹介プレートを描いてみよう
今回のゼミでは、レクチャーが始まる前にもちょっとした仕掛けがありました。
来ていただいた参加者の方が初めに行ったのは、自己紹介プレートを作ること。
真っ白なA3の紙を3つに折って、「自分の名前」と「小さなイラスト」を描いていただきました。 ネームプレートひとつをとっても、名前の描き方、どんなイラストを描くかなど、それぞれに個性が表れます。絵を見て楽しく、名前を見て相手を覚えられる非常に素敵な導入となりました。
◆ファシグラとは?
レクチャーはまず、「ファシグラ」という言葉の説明から始まりました。
「ファシグラ」という言葉は、「ファシリテーション・グラフィック」の略語で、議論や対話を促す「ファシリテーション」と、その流れを絵に描いて可視化する「グラフィック」を掛け合わせたものです。
最近では都市部を中心に、ワークショップなどの場で浸透しはじめています。
なかにはファシグラを専門とした会社を立ち上げる方もいらっしゃるなど、今後様々な場での活用が期待されています。
古林さん自身が様々な場で実践され、効果を感じられていることもあり、
「物事や議論を見える化をしてファシリテーションを行うとコミュニケーションが豊かになります!」という力強いメッセージが印象的でした。
◆アイスブレイク
ファシグラの概念を共有したのち、可視化を経験するためのアイスブレイクを行いました。
古林さんが提示したテーマのもと、参加者の皆さんがコミュニケーションをとることを通じて、
「関係性を可視化する」全体ワークを実施しました。
一つ目のテーマは「血液型別のグループ作り」。「O型です!」という呼びかけを皮切りに同じ血液型の人どうしが集まりグループを作りました。
二つ目のテーマは「誕生日の順番」。細かいところの入れ替えがたくさんあり、多くのコミュニケーションが生まれていました。並んでみてわかったことですが、なんと誕生日が同じ人が3人もいらっしゃいました。
最後のテーマは「出身地の順番」。それぞれの出身地を確認しながら、北から南の順番に合わせて並んでいきます。滋賀県の中でも近江八幡や大津など市町村で分かれて並ぶことでそれぞれの出身地が見える化をすることが出来ました。
「話し合いながら動けた」「純粋に面白かった」「はじめに声掛けする人がいてよかった」という感想も生まれていました。
◆今回の3つのテーマ
さてレクチャーに戻ります。
古林さんは今回、
①可視化の効用
②可視化の技術(イロハ)
③可視化による対話が生むもの
の3つのテーマについてお話いただきました。
①可視化の効用
絵が効果的な可視化を手助けするケースは世界中色々な場所にあります。
例えばスリランカのシギリヤ・レディ。シギリヤ・レディと呼ばれる美しい美女達の壁画は、死者の鎮魂をするための絵として存在しており、想いというものが絵によって可視化されていています。
もちろん日本でも、昔から絵によって考えや想いは可視化されています。
長野県にある「星の下で舞う鬼」という絵は、かの有名な葛飾北斎が87歳の時に描いた絵で、畳21枚分に匹敵する大きさです。
葛飾北斎は自身のことを「画狂老人卍」と形容するなど、彼にとっての絵は情熱をぶつける場として成立しており、彼の情熱や思いが絵を通じて可視化されています。
古林さん自身がファシグラを実践された一例として、経営大学院での議論の可視化があります。
絵の前で写真を撮る人がいたり、絵についての会話やコミュニケーションが生まれていたり横のつながりを生んだりしていたそうです。
この状態を専門用語で「界隈性」があると言い、ファシグラを通じて新しいコミュニケーションが生まれる好例として挙げられていました。
また100万ダウンロードをされた経済産業省の若手官僚が作成した「不安な個人、立ちすくむ国家」という資料を通じて「立ちすくむ国家ワークショップ@霞ヶ関」が開催され官と民が対話を行う場が生まれ、講師の古林さんはその場のファシグラを担当されておられました。
その時に行なったファシグラの絵がSNSやブログや記事により拡散され、その場だけでは止まらずオンライン上でも新しいつながりを生み出していました。
家庭内での例として、古林さんの娘さんはお風呂が大嫌いだったのですが、お風呂場お絵かきセットを設置したところ、絵を描くこととあわせてお風呂が大好きになり、親子でコミュニケーションをとる時間が増えたそうです。
ファシグラが効果的な交流や対話、コミュニケーションを新しく生み出してくれることについて事例を通じて教えていただきました。
②可視化技術のイロハ- 実際に描いてみよう-
レクチャーが終わった後は、いよいよ実践編です。
チュートリアルとして、ファシグラのイロハを参加者全員で体験しながら学びました。
まず教わったのは、ペンの持ち方。
ファシグラでは基本となるペンの持ち方が存在します。
ペン先の一番尖ったところを左にすることで、横に引くと細い線を引くことができ、縦に引くと太い線を引くことができ、グラフィックにメリハリを付けることができます。
次に、表現をする時の基本です。
表現においては、S(主語)、V(動詞)、O(目的語)、C(補語)を意識して描くことが大事だと古林さんはレクチャーしてくださいました。
主語(S)は顔と体。絵心は必要なく、シンプルに顔と体を描くこと。
また、私、あなた、私たちという三種類を使い分けることが重要です。
次にV(動詞)。話す、叫ぶ、行くなど、人やものの動きを表します。
さらにO(補語)。嬉しい、怒り、驚き、悲しいという状態を補語で表します。
最後にC(目的語)。場所や目的地、時間や方向性を目的物として表します。
最後のイロハとして漢字を大きく描くこと、ひらがなを小さく描くことに気を付けるだけでグラフィックによりメリハリが生まれることを教えてくださいました。
◆みんなの絵で展覧会をしよう
教えていただいたテクニックをもとに、顔や体や線や丸を練習として描きました。
その後、それぞれの絵を机に置き、参加者全員でプチ展覧会を実施。
他の人が描いた絵を見ることで、自分が描いたものとの比較になり、効果的な学習につながります。
古林さんは「ファシグラに絵心は必要なく、大切なことはシンプルな絵の組み合わせ」とおっしゃっていて、他の人の描き方を見てストックを増やすことが「ファシグラの力」を高める秘訣だと教えてくださいました。
③ 可視化による対話が生むもの - グループでファシグラに挑戦してみよう –
ファシグラのチュートリアルを受けた後には実際にワークを行いました。
参加者の皆さんを世代がばらばらになるように三人一組の5チームに分けました。
チーム内で話し合い、「虎鷹」「Diversity」「Sun」「ばなな」「筋肉」と、それぞれユニークな名前に決定。
チームごとに、2人がひとつのテーマに対してひたすら会話し、残りの1人が聞き役となり、対話をグラフィックに落とし込む作業を行いました。
1つ目のテーマは「小さな幸せ」。
駐車場の入り口に車を止められた時、仕事終わりの冷たいアイスコーヒーを飲んだ時、友達に会えた時などそれぞれの参加者の身近な幸せが対話の中で生まれ、それらがグラフィックとして整理されていました。
2つ目のテーマは「こんな近江八幡は嫌だ」。
365日バームクーヘンしか食べちゃいけない、ゾンビの近江商人がいると言った大喜利のようなものから、チェーン店しか存在しない、山や水郷が無くなってしまうなどの真面目なものまで、多様なアイデアが生まれました。
最後のテーマは「滋賀のココが好き」。
自然が豊かなところ、琵琶湖があるところ、災害が少ないところなど滋賀県にゆかりのある参加者の皆さんならではの考えや見方が対話によって引き出されて、整理されていました。
◆2050近江八幡VISION
最後に全員で一緒に行うワークショップとして、2050年の近江八幡がこうなっていてほしい、という「2050近江八幡VISION」を考えました。
ここで、ディスカッションの導入として、(株)まっせマネージャーの田口より、過去に起きた近江八幡の変化の例として、戦中戦後の干拓による風景の変化、高度経済成長により八幡堀がどぶ川のようになり、市民活動により復活したことなどを紹介させていただきました。
その後、全体でディスカッションをする前に、5分間それぞれが2050年の近江八幡について考えてみました。
最後に考えたアイデアをそれぞれが発表し、有志の4名でグラフィックへの落とし込みを行いました。
このワークを通じて、参加者のみなさんからは、以下のような多様なアイデアが集まりました。
- 全戸瓦屋根にする
- 干拓を元に戻して西の湖を拡大
- 八幡ならではの歴史を大切に
- 安土城の再現 特別区 時代劇ごっこ
- 水中ミュージアム
- 八幡堀の水を綺麗に
- 鳥人間コンテストの開催地を近江八幡に戻す
- 花火大会を熱気球の上から見る
- 子供を育てやすい・住みやすいまち
- 「ある意味」不便な街にする
- 近江八幡の国際化
- クリエイティブ産業の復興
最後に参加者数名で色付けを行い、今回のまちなかゼミの参加者全員で作り上げた作品を「世界の中心で大切なものに出会うまち、近江八幡」と名付け、盛会の中、第6回のまちなかゼミは幕を閉じました。
◆次回のご案内
今後も引き続き、まちなかゼミを定期的に開催してまいります。
オープンなイベントはまだ未定ですので、決まり次第イベント詳細を公式フェイスブックページのイベントページでご案内させて頂きます。
まだ参加したことがない方も、気軽に参加してみてください!!